ブルーアースニュース2月号

NPOブルーアースニュース第108号 2024年2月5日発行

  今年のお正月は、元旦の能登半島地震、そして、2日の羽田空港のC滑走路上の航空機事故と、多難の幕開けでした。能登半島地震では、最大震度7と大きな揺れが発生し、地震発生から津波が能登半島に到達まで早いところでは1分程で第1波が到達しました。更に、輪島市などの建物の倒壊と大火災の発生が重なり、約1月経った現在でも、正確な被害状況の把握、及び、本格的な復旧計画ができていません。こうした中でも、一日も早く、電気、上下水道、燃料、情報、道路・鉄道、住居などの生活インフラの復旧が整って、本格的な復旧・復興が進むことを願わずにはいられません。
 そして、私たちも、被災地支援のできることから着手すると共に、今回の教訓を“ワレワレゴト”として受け止め、SDGsなどの大きな視点を見失うことなく、災害の防災・減災を真剣に考え、発信、実行に移す努力が不可避です。
 創設20年を超えたNPOブルーアースの日々の活動を常に振返り、新しい状況に合わせて修正を加えて行く必要があります。2月19日に開催される「社員総会」を、その大切な場にしたいと思います。

【NPOブルーアース活動の紹介】
1. おもしろ理科教室/環境教室

1) 2023年12月・2024年1月の理科教室の実施報告
・12/7  相模原中央支援学校「スライム」
・12/11 片平小学校「スーパーロケット」
・1/23  山下みどり台小学校「ペットボトルからわたづくり」(写真1)
・1/27  県立川崎図書館 大人の理科教室「光のスペクトル」(写真2)

2. E&Eセミナー&見学会
1) 2024/1月の参加
・1/6-8 国際地下文化遺産見学(吉見百穴・田谷の洞窟)&国際シンポジウム
    主催:国立大学法人 埼玉大学(理工学研究科 地圏材料研究室)
   共催:田谷の洞窟保存実行委員会
・1/6 「吉見百穴」の見学会に参加。古墳時代後期(6,7世紀)、200基を超える横穴墓の遺跡が国の史跡として保存されている。 太平洋戦争下では一部を破壊して地下軍需工場も建設された。
・1/6,7 「国際地下文化遺産 シンポジウム2024」にZoomで参加。日本だけでなく、イタリア・フランスの学者も参加。地域づくりや地域教育の紹介に加えて、開放による負の側面(劣化・害虫の発生等)にも触れた充実した講演になっていた。字幕式の同時通訳も実施され、運営方法や参加者の多様化に向けて興味深かった。

3. オープンサロン
< 2月の予定 >
・日時: 2月19日(月) 16:00~17:30 (県民センター703号室, 対面+Zoom)
・テーマ:「モーターはなぜ回る - 家にあるモーターを探そう
・話題提供:松岡成典(会員)
・概要 : 理科教室の新テーマの内容紹介とそれに対する皆さんのご意見を伺いたいと思っています。
< 3月の予定 >
・日時:3月18日(月)16:00~17:30 (県民センター703号室, 対面+Zoom)
・テーマ:「ある留学生の足跡
・話題提供:持田典秋(会員)
・概要 :2001年に長男が赴任していたカザフスタンに旅行し、たまたま知り合った当時20歳の女子学生が日本に留学し、その後どうなっていったのか、我が家との付き合いの経緯も含めてお話しします。

※ふるってご参加ください。ご希望の方は下記よりお申込みください http://bit.ly/2y2rnoc 
メッセージ欄に「オープンサロンXX月参加希望」とご記入ください。
※オープンサロンの後、有志で懇親会を行う予定です。
(参照)オープンサロンのホームページ:https://bit.ly/3c7tkyk

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「コラム」コーナー
『砂地盤の液状化被害に想いを寄せて』
     岸田隆夫(会員)
  あるテレビ・ニュースを視て
 元旦に発生した「能登半島地震」に関連する報道が、約1月経過した現在も、テレビ・ニュースの多くの時間を占めています。その中で、1月29日(月)朝、NHK「おはよう日本」の「内灘町の液状化」の報道が切掛けになり、液状化被害に想いが募りました。住民のご老人が「この家にはもう住むことができないと思っています」、「私が苦労して建てて家族で一緒に住んでいた家なので、愛着があり、悔しいです」と、液状化被害に遭った家の再建や生活の継続を諦めて嘆息される映像が、胸を打ちました。
今回の地震で生じた住宅被害の様子
 ニュースの中でも触れていましたが、今回の能登半島地震における住宅被害(特に砂地盤の液状化に関して)の様子として、次の点を挙げることができます。
・上記ニュースでは、前日1/28までの石川県内の住宅被害(倒壊・津波・火事・液状化等)は、43,766棟に達していることを伝えています。昨年の都道府県ランキングでは、石川県は人口34位・1,117,303人、世帯数497,350戸ですので、この時点で8.8%の世帯、9.8万人もが住宅被害を受けて、苦しんでいます。
・従来は震度5強以上では、旧河道跡など緩く堆積した砂地盤で液状化が発生すると言われていました。しかし、内灘町の震度はそれを下回る5弱でしたが、甚大な液状化被害が起りました。
・内灘町の液状化では、上記のテレビ・ニュースでは地盤が水平方向に約80cm移動した様子が出ていましたが、大きいところでは約3mの側方流動が生じ、道路舗装版が約1m隆起し、建物が約1mめり込みました。地盤に大きな水平変位が生じた地震被害は、我が国では比較的稀です。
・能登半島地震では、震源地の石川県を始め、富山県・福井県・新潟県など震度5強~4の揺れを受けた遠隔地でも、数多くの液状化被害が発生しています。
液状化被害からの復旧・復興について
 地震や津波で被災した住宅は、全壊の場合には撤去の上、再建されることが考えられます。一方、液状化被害を受けた住宅建物は、概ね原形を留めて、地盤が不等沈下(建物各位置で沈下量に差)して傾斜した状況にあるのが、一般的です。通常、液状化で生じた建物の傾きを水平に戻す「沈下修正工事」が必要となります。
  したがって、直観的には液状化の被害額も小さいと思われます。しかし、東日本大震災(2011)の被災家屋を調査した資産評価システム研究センターの報告書(2012.3)では、下表のように、全壊など被害認定の基準の違いによる影響もありますが、液状化被害を受けた家屋の損耗残価率が小さく、被害金額も大きいことが示されています。
表1 BEニュース2402.jpg
  こうした被害額が大きい1つの理由が、建物に加えて地盤を対象とする「沈下修正工事」に比較的高額な費用が掛ることです。その工事は、①先ず基礎下の地盤を掘って、穴の底に鉄板などを敷いて油圧ジャッキの反力版とします。次に、基礎を介して建物をジャッキで持上げて各部の高さを修正します。③油圧ジャッキを外せるよう、仮受けを設けて支えます。④最後に、モルタルを充填して建物荷重を地盤に伝えるようにして、周囲を土で埋め戻します。
 これらの作業を殆ど人力で行いますので、その重労働と危険性は他の建設工種に比べて大きく、微妙な作業になりますので、「曳家」と呼ばれる特殊技能集団が担います。歴史的建築物や文化財を移動・保存を得意としており、日本曳家協会の会員は全国59社と多くありません。北陸地方では、富山県に3社、福井県に2社ありますが、石川県にはありません。
したがって、液状化被害を受けた方々は、金銭面の負担に加え、担い手を探すことに苦労されるはずです。さらに、探せても、着手するのは、1年半後など、工期の遅れも予想されます。東日本大震災の復旧初期、千葉県の液状化被災地で、「沈下修正工事」を見学した際、鹿児島県から「出張・移転」した曳家の方からは「向こう2年間はお仕事をいただいています」と話していました。石川県の状況が心配されます。
 地震で地盤が液状化して、傾いてしまった住宅の復旧について上記しましたが、能登半島地震では液状化ばかりではなく、地震動での倒壊、津波による被災、火事による被害、加えて、心身の健康面での被害も心配されます。これら全ての面での一日も早い復興を祈念したいと思います。
私たちができること、すべきことを考える
こうした凄まじい災害は、他人事ではありません。いつ、どのような形で私たちも遭遇するか分かりません。私たちができることを、次に考えたいと思います。
・まず、首都圏にある被災各県のアンテナショップ等で、買い物をする。ふるさと納税で、『復興米』(地震で保管用の巨大袋が壊れ、銘柄が混ざってしまったお米)もよろしいと思います。更に、復旧が済んで訪問客を受容れられる被災地を訪れることは、お互いに得るものが多いと思います。
・NPOの活動などで、分かる範囲の情報を持寄って情報共有を図り、その時期に望ましい支援を進めたいと思います。併せて、私たちが遭遇するかもしれない災害に対して、避難方法を確かめ、人命を守る方策を立て、避難生活に必要な備蓄を準備するべきでしょう。
・能登半島地震の被災地における「復旧・復興」状況をワガコトとして注視すると共に、「東京一極集中」や「地方の過疎化」を防ぐなど、国土全体からの発想とそれに基づく意見の発信を図るべきだと思います。
以上


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